STORY

STUDIO FNCの仕事の裏側を公開

text by RYUNOSUKE AOTA
photo by RYUNOSUKE AOTA
article up 2018/03/21

マチオモイに20代最後の想いを馳せて

VOL.06「わたしのマチオモイ帖へ最後の「馬車道人」を作った話」

 その提案は、去年の秋に遡る。STUDIO FNCが10周年を2年後に控え、そして、自分たちの年齢も30代へ突入間近だった。もう「若い」とはお世辞にも言えない年齢が近くなり、自分たちの20代の活動すべてを振り返る。その中で、やり残したことがあった。それが「馬車道人」の最終号の発行だった。当時、毎月制作していたこの冊子は、わたしのマチオモイ帖というイベントの開催を知ってから、2年連続で参加した。しかしながら、活動途中で、メンバー内でいざこざがあり、結局、中途半端なまま、冊子制作は終了してしまった。若気の至りだったのかもしれないが、やはり、今、再びメンバーが元に戻り、また30代へ新たな活動をしていく前に、きちんとけじめをつけておきたかった。

 やるとなれば、動き出すのは早い。それが、STUDIO FNCの強みの一つでもある。早速、副代表に復帰した臼木と2人で、横浜馬車道へ。まだ、本格的な冬がやってくる前の、11月だった。ひんやりとした空気が漂うが、日中はまだまだ秋の余韻が残る中、訪れた馬車道は、あの時の面影を多く残していた。とはいえ、4年も経っていれば変わっているところも数多くあった。

 自分たちの原点でもある馬車道北仲通にあるビルの横にあったタバコ屋さん、馬車道商店街にあった薬屋さん、とにかく美味しかったイタリアン料理のお店、カレーのお店、数えきれないほどの思い出がふつふつと蘇ってくる。しかし、そのどれもが今のこの街から皆なくなってしまった。それが時の流れなんだと感じ、そして、自分たちがそれだけ、人生のコマを進めて来たのだと実感する。

 若かった自分たちが当時、どういう目線でこの街を見ていたのか。それは、当時の冊子を見れば思い出すことが出来る。だからこそ、今の自分たちの目線で新しい冊子を作りたかった。そして、今のこの街を見てみたかった。取材して、各所を回りながら感じたことは、この街がやっぱり好きだということ。でも、今のこの街に自分たちはどうやら合わないようだった。今、自分たちが向かうべき場所、そして、やるべき場所は、もうここではないんだということも実感した。だからこそ、この冊子が本当に最後の「馬車道人」になったのだった。ただ、最終号とはどこにも記載していないし、最後だという文章も書いていない。なぜなら、これからもこの街はあり続けていくわけで、そして、これからもまた、何かのキッカケでこの街に帰って来て再び、この冊子を作ることもあるかもしれない。だからこそ、最終号とは記載しなかった。

 取材から3ヶ月。文章を作っては確認、写真を加工しては確認。製作を進めていき、ようやく2月下旬に完成した。久々に届いたその冊子は、なんだか懐かしくもあり、しかし、デザインも内容もがらりと変更したことで、新鮮な気持ちでもあった。とにかく、完成品を見ることが出来るのが幸せだった。そんな完成品を2人してニヤニヤと眺めていたのは今だから言えることである。

 そして、3月。制作を始めてから4ヶ月。大阪で展示されているものを見に、大阪へ出張した。新大阪駅から大阪駅で環状線に乗り換えて1駅目。天満駅から降りてすぐの場所にある関西テレビ本社が入るカンテレ扇町スクエア。その3階で開催されていた「わたしのマチオモイ帖2018」イベント。今年送られて来た新作のすべてがここに展示されていた。馬車道帖は入り口の目の前に展示されており、すぐに見つけることが出来た。自分たちの制作したものが、こうして展示され、そして、それを見ることが出来る。クリエイティブを行う人間として、この上ない至福の時である。じっくりとその光景を目に焼き付け、そして、今年も集まった数多くの作品をゆっくりと味わった。どの街も個性が溢れていて、そして全て目線が違う。見るもの、注目するところ、テーマ、とにかくその街の魅力を伝えることに対しての想いだけは、どの冊子も同じだった。

 久々に作った「馬車道人」が、このような形で自分に新しい刺激を与えてくれるとは思ってもみなかった。もうすぐやってくる本格的な春と共に、STUDIO FNCの本当の第2幕がスタートする。自分たちの人生の第2幕もきっとスタートする今年は、なんだか力が漲っている。まだまだ「若い」人たちに負けてられない。10年分の刺激と、これからの10年の刺激を求めて、これからもクリエイティブ集団STUDIO FNCは、歩みを進めていく。まだまだ、我々は、旅の途中なのだ。

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